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1945年8月9日。田中寛子は縁側に立ち、眼前に広がる長崎の美しい山々を見つめていた。「戦争はいつ終わるのかしら?」ドイツ人男性コンラッドとの結婚を目前に控えた彼女はひとりごちた。その瞬間、閃光と爆風とともに世界は消え去った。彼女の背中に鶴の形をした火傷だけを残して。傷心の寛子は、戦後コンラッドの異母姉夫婦を頼って単身インドのデリーに渡る。そこで夫婦の使用人でムスリムの青年サジャッドと知り合い、その知的で真摯な物腰に次第に惹かれていく…。長崎への原爆投下からインド・パキスタン分離独立、ソ連のアフガニスタン侵攻、2001年同時多発テロ事件―激動の現代史に翻弄された日本人女性の生の軌跡を描く圧巻の文芸大作。アニスフィールド・ウルフ図書賞受賞。オレンジ賞最終候補作。
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