「コベナンツ(Covenants)」とは、一般に、当事者の契約上の義務を定める条項のうち、主たる義務以外の付随的義務を定める特約のことをいいます。コベナンツは、それが遵守されることを通じて契約の目的である取引を支障なく遂行できるようにするものである点において、リスク事象の回避・低減に向けた予防的な機能を有するものですが、リスク事象が顕在化した後において調整的な機能を果たすこともあります。例えば、新型コロナウイルス感染症拡大の過程で、事業環境が急激に悪化し、財務制限条項(コベナンツ)に抵触する事態が頻発した際、多くの事例において、期限の利益を喪失させて関係解消に向かうのではなく、コベナンツを梃子として、事業環境の下で合理的な契約内容となるよう契約条件を見直すこと等といった対応がなされました。地政学リスク、気候変動対応、産業構造の大転換等、企業経営を巡り、先行き不透明な状況が続いている中、中長期的な契約関係を構築するに当たり、コベナンツを上手に活用した契約管理の重要性がさらに増しているといえます。本書では、契約実務の観点から、コベナンツについて押さえておくべき基本的事項を解説しています。まず、前半(総論)で、コベナンツの意義・分類・機能・倒産手続下での処遇や、コベナンツにまつわる近時の新制度について概説した後、後半(各論)で、ファイナンス取引、M&A、事業契約(CSR条項)などの場面別にコベナンツの条項例や具体例を紹介し、交渉上のポイント、コベナンツ抵触時の対応等、実務上留意すべき事項等を解説しています。