「資本政策を作っています」とおっしゃる経営者の方にご提示いただいても、実態は過去の株式変動の推移をまとめた「株式変動推移表」にとどまっているケースが後を絶ちません。もちろん、株式変動推移表は重要な資料です。しかし、それだけでは資本政策とは呼べません。将来の資金調達ラウンドにおける株価・調達額・持分比率の変化、ストックオプションの発行タイミングと付与対象、エグジット時の各株主へのリターン―こうした将来シナリオを見据えた「戦略的な設計図」こそが、真の資本政策です。資本政策の不備は、後になって深刻な問題を引き起こします。創業者の持分が早期に希薄化しすぎて経営上の意思決定に支障をきたすケース、ストックオプションの発行設計が不適切で優秀な人材への動機付けとして機能しないケース、投資家との間で想定外のコンフリクトが生じるケース―いずれも、初期段階での資本政策の設計次第で、十分に回避できた問題です。本書は、こうした現状を少しでも変えたいという思いから生まれました。資本政策の重要性を正しく理解していただくこと、具体的な作成方法を習得していただくこと、そして作成に必要な基礎知識を身につけていただくこと―この3点を、できる限りわかりやすくお伝えすることに努めました。難解になりがちなテーマも、実務に即した事例や図表を交えながら解説していますので、資本政策に初めて向き合う方にも手引きとしてご活用いただけるものと考えています。