気候変動や水環境の悪化,生態系の危機など,現代の地球環境問題は単一の学問領域では捉えられない複合的な課題である。今日は,単に危機が提唱されるだけでなく,さまざまな分野の定量的な分析をもとに「地球の限界/プラネタリー・バウンダリー」の問題が部門別に定量的に示され,国際社会でも達成年次を設定して,早急の解決が求められている。
しかしながら,各学問分野は細分化・深化して相互の連携が充分ではない。また人間社会においてもさまざまな分断が生じて,地球環境問題の解決を困難にしている。
そこで本シリーズでは第I巻で課題群を「包摂」する考えを示し,第II巻でそれらを「つなぐ」ことで行動をおこし,最後の第III巻で全体を「システム」としてとらえることで課題解決をめざす。
第?巻のもう一つのテーマは「人の生き方を問う」,すなわち「正義」をとらえなおすこと。植民地支配による資源収奪,先住民社会をおびやかす気候変動,脆弱な熱帯林の開発や農業をめぐる問題など,人類が行ってきた問題ある行為は,当事者への不当なダメージはもちろんのこと,深刻な地球環境問題をもひきおこしてきた。これらを「社会不正義」としてとらえ直すことで,課題解決のための新たなモノの見方・捉え方を提言する。
[第I巻で扱う主なキーワード]
ブラネタリー・バウンダリー(地球の限界),ネイチャー・ポジティブ,カーボン・ニュートラル,サーキュラー・エコノミー,ELSI(倫理的・法的・社会的課題),RRI(責任ある研究・イノベーション),被害の不可視化,社会正義,環境正義