「この『イデーンI』の前半部分は、二つの篇から成るが、その第一篇は本質直観ないし形相的還元を扱い、その第二篇は現象学的還元を取り扱っている。現象学的還元と本質直観という二方法が、フッサール現象学のみならず、現象学的哲学運動全体にとっても、その決定的な方法論的基礎を成すものであることは、今日誰知らぬ者もないであろう。むろん、その方法的意義にいては、現象学的哲学者の中でも、種々の解釈が分かれ、その真の意義について侃侃諤諤の論のあることは、世の識者の夙に知るところであろう。それは、ハイデッガーからメルロ=ポンティにまで通ずる現象学的哲学の方法論の根本問題を成している。オイゲン・フィンクの1930年代の優れた論著が、独仏両国にわたったこの現象学理解の要に位置して、種々の新しい解釈の源泉を成していたことも、事態を能く識る人には周知のことであろう。しかし現象学的還元と本質直観についてどのような態度を採るにもせよ、当の方法論自体について、まず世の人々は良く熟知しなければならないであろう。そして、その二方法の射程について、まず何よりもフッサール自身が最初に綿密に考究した最も基本的な論述が、この『イデーンI』の前半部分にほかならないのである。」(訳者あとがき)
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